5年程前に椎間板ヘルニアで入院した時、歩くのも困難になったのですが、リハビリテーションスタッフの方にとてもお世話になり、回復することができました。その時、リハビリによって痛みの面もそうですが、気持ちの部分でのサポートがとても大きかったのです。その経験から、自分も医療の道に進んで人の役に立ちたいという思いが湧き、作業療法士を目指すことを決意しました。
現在は、天山病院リハビリセンターで入院患者様へのリハビリや、通所(デイケア)でのリハビリを担当しています。リハビリの内容は、一人一人違います。その根底にあるのは、「その方のためになること」を考え、行うことです。そのために、患者様との会話を通して信頼関係を築き、一人一人に合わせたリハビリの内容を決めていくように心がけています。
「もう一度頑張ろう」と患者様のやる気を起こさせるきっかけをつくることも、作業療法士の大きな役割の一つだと考えています。今は、約1年間担当してきた患者様が元気でいてくれること、それを見るだけで、作業療法士としてのやりがいを感じます。
作業療法士は、身体や精神に障害を持つ人や子供・高齢者に対して、日常生活に対応できる応用的動作能力を身につけさせ、社会生活への適応を図ります。そのために、食事、入浴、排泄といった生活関連動作などの訓練に加えて、障害者の「働く」ことへの指導・援助も行います。また、在宅患者様の家に出向いて住宅改造をアドバイスしたり、家具の調整、生活補助用具の工夫、製作など、その人に合わせて生活の場を改善することもあります。働く場所は、主に病院やリハビリテーションセンター、老人保健施設などの保健・医療施設ですが、特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどで専任の作業療法士を配置する施設もあります。
近年、医療・福祉の分野は、制度改革と規制緩和が大きく進められています。介護保険制度が施行され、保険の給付対象になったことから、在宅や地域におけるリハビリが重要視されるようになり、病院の早期退院や在宅福祉サービスの充実が推し進められ、それに伴って作業療法士の活躍の分野は広がりつつあります。介護関連の民間企業や、市・県などの行政に勤務するケースも増えてきており、今後ますます期待される職業です。
作業療法士養成校と呼ばれる学校(専門学校・大学など)を卒業すると、国家試験受験資格が得られ、厚生労働省が行う試験に合格し、作業療法士免許を取得します。養成校への入学資格は、高等学校卒業(見込みを含む)、高等学校卒業程度認定試験合格者等です。各学校でカリキュラムの特徴がありますが、3年制と比べ4年制では、講義時間数が多くしっかり学べる、関連知識や技術の修得が可能、国家試験対策の時間が多く取れるなどの利点があります。
作業療法士として仕事をしていく上で最も重要なのは、患者様を理解し、患者様の思いに共感する気持ちです。体に障害を持つと心に痛手を受けることも多いため、患者様の心のケアまで行うことができる思いやりと人間性が必要です。
患者様が単に病気を克服するだけでなく、一人の社会人としての存在を取り戻せるよう、サポートをしていくのが作業療法士です。新しい患者様の生活方法を、一人ひとりの適性や好みなどを考慮しながら、提案し、コーディネイトする力が必要となります。